ドアーズ(The Doors)の凄さと影響力

アーティストレビュー

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今回の記事は、ドアーズについてです!私も大好きなバンドで、非常に興味深いバンドでもあります。60年代後期のサイケデリックムーブメントに登場し、歴史に名を残す大傑作を生み出してきました。風変わりな音楽性とフロントマンのカリスマ性ゆえに、影響力の大きさも半端ないです。

ロック界のカリスマと言えば誰が浮かぶでしょうか。ジョン・レノンやカート・コバーン、フレディ・マーキュリーやシド・ヴィシャスなど…
加えて、フロントマンのジム・モリソンもその一人です。一般的な知名度こそ彼らに劣りますが、そのパワーは誰をも凌駕していることでしょう。

と言うのも、先日オリバー・ストーン監督の1991年作、『ドアーズ』を視聴し、ドアーズに対する興味が再燃していたところです(脚色の多さゆえに賛否両論のある作品ですが)。
何より、ジムモリソンの狂気っぷりはレベルが違います。ロッカーのアタオカエピソードって腐るほどありますけど、これほど理解不能な人間はまあいないでしょうね(ステージで◯慰行為して逮捕されるなど)。
では、本編へどうぞ~

【音楽性① メンバーの多様な出身ジャンル】

ドアーズは、メンバーの皆、出身の音楽ジャンルが異なります。それゆえ、唯一無二の音楽性を持っているのです。

Vo. ジム・モリソン → 音楽経歴無し
Key. レイ・マンザレク → ブルース、クラシック
Gt. ロビー・クリーガー → フラメンコ
Dr. ジョン・デンスモア → ジャズ

ジムモリソンは、音楽的なバックグラウンドが一つもなく、ドアーズを結成して初めて歌をはじめたという変わった人物です。
なお、作詞作曲はメンバー全員が公平に担当しています。中でも、作曲はレイやロビーが、作詞はジムモリソンが多く務めている印象がありますが、細かい話はよくわかりません(彼は詩人としてのこだわりが非常に強いので)。

ドアーズをApple Musicで
ドアーズの音楽をApple Musicで聴く。

【音楽性② ベースがいない!?】

ドアーズの音楽性の特徴として挙げられるのは、やはりベースギターが不在というところですね。ライトなサイケデリックの質感や独特の浮遊感に繋がっており、ドアーズサウンドを象徴するところだと思います。
なお、バンドメンバーにベースギターの担当がいないということなので、後期の活動やスタジオレコーディングの際には、セッションメンバーがついていたという話もあります。

では、ベースが無くて楽曲として(ロックとして)成立するものなのか?というところですが、実を言うとベースっぽい音色は楽曲にあります。要は、鍵盤ベースなんですね。キーボーディストのレイが、右手でオルガンを、左手でベースを扱っています。非常に器用ですが、凄いですよね。唯一無二すぎる。

(Key. レイ・マンザレク)

【音楽性③ サイケとブルース】

音楽性として、やはり外せないのがサイケデリック・ロックであるということです。1967~69年の当時の音楽シーンは、まさにサイケ真っ盛りの時代でした。ドラ⚪グに溺れ、それを音楽に反映するサイケのスタイルは、当時の流行そのものでした(ビートルズやビーチボーイズ、ジミヘンなど)。ジムモリソンは、加えてウイスキーなどの酒にも耽溺しており、サイケのシーンにパフォーマーとしてのインパクトを与えたことで、非常にエポックメイキングな存在となっていました。

1970年以降、サイケの時代は終わり、ロックの多様化が始まります。そんな中、ドアーズは残りの1970~71年の2年間で、ブルースへの回帰を果たし、ルーツミュージックへと転向しました。5枚目、6枚目のスタジオアルバムである『Morrison Hotel』『L.A. Woman』は、ブルースロックの名盤として名高いです。前作の『Soft Parade』の実験的なスタイルとは何が起きたのかレベルで打って変わった様子です。

【音楽性④ 歌詞の哲学性】

ジムモリソンは、非常に詩人としてのこだわりが強く、自身を作詞家として誇っていました。
実は非常に賢く、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)で映画科を専攻していました(レイともUCLAで出会う)。そのため、心理学や哲学に影響を受けた、映像的で文学的な詞が多いのです(ニーチェやフロイト、カミュやカフカなど)。そもそも、バンド名の「ドアーズ」は、オルダス・ハクスリーによるサイケデリック体験の手記・手法についての名著、『知覚の扉』に由来するものなんですね。

哲学性の言語化や歌詞世界の映像化は、非常に難しいところではありますが、サイケにおいて欠かせない要素でもあります。そのため、ジムモリソンの作詞は、サイケデリックロックバンドとして最強の武器だったのです。

(Vo. ジム・モリソン)

【影響① プログレッシブ・ロック】

次に、後の音楽界に与えた影響について述べていきたいと思います。
まずは、プログレへの影響です。プログレの起源と言えば、キング・クリムゾンの『宮殿』であるという認識は間違いないです。また、プログレの源流であるロックとして、プロコル・ハルムやムーディー・ブルースが大きな影響を与えたバンドであることも事実です。しかし、もっと前を遡ると、ビートルズの『Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band』や、ビーチボーイズの『Pet Sounds』などがプログレの最初期の形であったことも、知られた話ですよね(アルバム全体で芸術表現をするコンセプトアルバムの概念の登場)

さて、前提は置いといて、実はドアーズもそんな彼らに並んでプログレの原型を形成したバンドの一つであるのではないかと、私は思っています。
ファーストアルバム、『The Doors』(ハートに火をつけて)の最後に収録されている長尺ナンバー、「The End」は、11分半にも及ぶ超大作です。オリエンタルでサイケデリックなサウンドや、心理学者フロイトの思想に影響を受けた哲学的な歌詞、楽曲の尺の長さなど、まさにプログレの特徴をしっかりと持っている名曲です。この楽曲のインパクトはシーンにおいて非常に大きいもので、間違いなく後のプログレへの水脈に多大な影響を与えた作品だと思います。

He walked on down the hall
And he came to a door
And he looked inside
Father? (Yes, son?)
I want to kill you
Mother
I want to…

(「The End」 / The Doors)

ちなみに、セカンドの『Strange Days』にも同様に、ラストに長尺の楽曲があります。ファーストとセカンドは非常に似たような作風で、両者ともにサイケの大名盤となっています。

【影響② パンク・ロック】

次は、パンクへの影響についてです。パンクの持つ衝動性や破壊力は、まさにジムモリソンのアティチュードに共通するものがありますよね。特に、ステージ上での挑発的で扇状的なパフォーマンスは、多くの反体制的な若者の精神に影響を与えていたことと思います。

元祖パンクバンドのザ・ストゥージズのフロントマンであり、パンク界のゴッドファーザーであるイギー・ポップが、ドアーズのライブを観戦していたとの記録があります。
また、ドアーズに影響を受けたアーティストとして、パティ・スミスやテレヴィジョンなどのパンクロッカーたちが挙げられます。

(イギー&ストゥージズの名盤、『Raw Power』はこちら)

ジムモリソンは、27歳でこの世を去った、いわゆる「27クラブ」の会員でもあるんですね。不謹慎な話ですが、カリスマの夭逝は伝説となりやすいです。パンクバンドを代表するイギリスのセックス・ピストルズのシド・ヴィシャスが21歳で亡くなったり、パンク由来のジャンルであるグランジバンドを代表するニルヴァーナのカート・コバーンが27歳で亡くなったりしていることを鑑みても、ドアーズはかなりパンキッシュな特徴のあるバンドですよね。

パンクロックの源流として、もう一つ加えてお話ししたいのが、The Velvet Undergroundというバンド。サイケデリックだったり、破壊的な歌詞世界が高い評価を得ている点を考えると、ドアーズとの共通点も非常に多いです。ぜひ、こちらも一聴していただきたいですね。アンディ・ウォーホルのジャケが有名。

以上、ドアーズの凄さと影響について、入門編的に論じてみました。最高のバンド。
本日もご愛読ありがとうございました!それではまた(╹◡╹)

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