HIROSEのミュージックバーへようこそ。こちらのブログでは、音楽を中心としたさまざまな情報を気まぐれに発信しています。
「Rate Your Music」(RYM)ってご存知ですか?
アメリカ最大の音楽掲示板であり、分散された世界中の個々の音楽オタクたちの集合知による、音楽アーカイブ及びレビューコミュニティサイトです。
非常に合理的な構造なので、RYMによる各々のアルバムランキングは、ある種強い説得力を持っていると思います。
したがって、今回はその中で著名な『史上最高の日本の音楽アルバム』について見ていき、同時に主観的な批評も行っていきたいと思います。日本人目線だと、賛否両論もかなりあると思います(ほとんど海外の邦楽オタクたちによるランキングなので)。
変動の激しいランキングなので、今回は掲示版における最新版を参照していこうと思います。
Custom chart: Best albums of all time from Japan – Rate Your Music
【1~10位】
1位: Fishmans『LONG SEASON』(1996)
2位: Boris『Flood』(2000)
3位: Boris『Boris at Last –Feedbacker–』(2003)
4位: Fishmans『宇宙 日本 世田谷』(1997)
5位: Nujabes『Modal Soul』(2005)
6位: 椎名林檎『加爾基 精液 栗ノ花』(2003)
7位: 青葉市子『アダンの風』(2020)
8位: 青葉市子『0』(2013)
9位: 平沢進『救済の技法』(1998)
10位: 椎名林檎『勝訴ストリップ』(2000)

フィッシュマンズとボリスが1~4位を独占し、青葉市子と椎名林檎も2枚選出、他にも平沢進やNujabesなど、長きにわたり海外で高い評価を得ている面々が揃います。
フィッシュマンズに関しては、日本の評論筋でもトップクラスに高い評価があるので納得ですが、ボリスに関しては海外での知名度が抜けて高く、日本のオーバーグラウンドではまああまり耳にすることのないバンドですよね。
アンビエントやプログレがやはり海外の邦楽に対する評価軸になるんですかね。
日本だとフィッシュマンズは『空中キャンプ』が圧倒的ですが個人的には『宇宙 日本 世田谷』が最も好きなので嬉しいです。
面白いのが、1位も4位も長尺の一曲のみのアルバムなんですよね。曲単体というより、アルバムとしての作品評価がうかがえます。

Nujabesと青葉市子の評価が高いのが個人的に嬉しく思います。青葉市子は日本独自の空気感を感じるし、Nujabesは逆に海外と同じ土壌で世界水準のHIPHOPをできているのが凄い。こういう音楽が評価されるべきだと思うのです。
しかし、個人的には少し評価軸が偏りすぎかなと思います。歌謡好きとしては、アンビエントやプログレのみならず歌謡曲やニューミュージックをもっと評価してほしいと思うし、シティポップなんかは日本独自の概念を含んだ上、サウンドも世界水準のAORなので、絶対にもっと高く評価されるべきだと思います。山下達郎や大滝詠一、大貫妙子など、保守的な意見だとは思いますがやはり正統に評価しようとすると嫌でも入ってくるべきリストだと思うんですけどね(まあトップ10だし期待しすぎても仕方ないか)。

【11~30位】
11位: Boris『Pink』(2005)
12位: Boredoms『Vision Creation Newsun』(1999)
13位: ミドリ『あらためまして、はじめまして、ミドリです。』(2008)
このあたりのロックは本当に強いですね。日本のプログレッシブなHR/HMは海外の評価が高いイメージです。そのあたりのシーンは正直私の専門外なので、この順位の高さに凄く共感できるというわけではないのですが、邦楽に強い分野があるということに最大の意味がある気がします。
14位: 渋さ知らズ『渋星』(2004)
15位: Nujabes『Metaphorical Music』(2003)
16位: Ground-Zero『Consume Red』(1997)
絵に描いたような前衛音楽です。日本だと絶対にランクインしないでしょうね。私もこのレベルは楽しみ方に悩みます(わかりやすい音楽が好きなもので)。
17位: Lamp『恋人へ』(2004)

わけわからんくらい好きなアルバムなので嬉しいです!とはいえ、私も海外でのリバイバルを通して逆輸入的に知りました。青葉市子などのランクインでも感じましたが、このあたりの現代ポップスでは、女性ボーカルの素朴で儚げな声がやはり凄く強いんじゃないか、と思うのです。メロディーセンスも半端じゃないですしね。
18位: 山下達郎『RIDE ON TIME』(1980)

山下達郎が入ったことにとりあえず安心しました。山下達郎は、硬派にポップスを極めながら、日本独自の感性もそのサウンドにパッケージしました。凄いところは、世界のトップクラスのポップスと、なんのレベルの差異もないほどに高水準のものを提供し続けていることです。
とはいえ、『RIDE ON TIME』とは意外でした。結構地味なアルバムではあるんですけどね、表題曲があまりにも強すぎたかな。日本では『FOR YOU』がやはり筆頭にあがりますよね(ちなみに『FOR YOU』は24位)。
19位: Boris『あくまのうた』(2003)
20位: advantage Lucy『ファンファーレ』(1999)
21位: 坂本龍一『1996』(1996)

世界の坂本龍一とは言いますが、それが可視化されたということでしょうか。コンピ盤ということで、著名な劇伴を多く含んでおり、心から美しさを感じる涙の名アルバムに仕上がっています。日本でもこのくらい高ければいいのに。
22位: MASS OF THE FERMENTING DREGS『ワールドイズユアーズ』(2009)
23位: CASIOPEA『CASIOPEA』(1979)
今回このリストを見返してみて驚いたんですが、近年ジャパニーズフュージョンの海外評価がめっちゃ上がってるんですね。まあ絶対に評価されないわけがないとは思ってました。本当に嬉しいです。
アンビエント的な評価軸に堅実ならば、シティポップのインスト音楽とも言えるカシオペア、T-SQUARE、高中正義あたりのフュージョンは必ず評価されるはずです。ちなみに2022年のランキングを参照してみると、フュージョンは100位内に0枚でした。
24位: 山下達郎『FOR YOU』(1982)
25位: 高中正義『SEYCHELLES』(1976)

高中正義がこの順位に入っていることは、このランキングが示す最大の意義であると言えると思います。何度も言いますが、”日本独自性+世界水準の音楽”が私の評価軸ですので、それで考えると高中正義は間違いなく高評価を受けるべきなのです(超主観)。
ちなみに、39位: 高中正義『The Rainbow Goblins』(1981)と、41位: 高中正義『BRASILIAN SKIES』(1978)もあります。
26位: Ground-Zero『革命京劇 Ver.1.28』(1996)
27位: Devon Hendryx『The Ghost~Pop Tape』(2013)
恥ずかしながら全くもって存じ上げなかったんですが、今回調べてみると海外の方でした。でも、日本で制作・発表を行ったということで、RYMは邦楽アルバムと位置付けています。
DJ Sprinkles(37位)やJim O’Rourke(29位,35位)も同様みたいです。一貫してるという点では信頼がありますが、参考にしにくい部分はありますね。
28位: Mitski『Bury Me at Makeout Creek』(2014)
29位: Jim O’Rourke『Insignificance』(2001)
30位: 杏里『TIMELY!!』(1983)

シティポップ1の名盤の一つだと思います。このように曲単体でも強いアルバムは個人的に推してしまうんですけど、RYMの評価軸であるアンビエントやプログレとは相性が悪いので、この選出はレアなケースかもしれませんね。まあ結局は完成度か。
【31~50位】
31位: 平沢進『SIREN』(1996)
32位: honeydip『Another Sunny Day』(2000)
平成の隠れド名盤ですが、海外の方々はどうやってこのアルバムをコミュニティ内に広めたんでしょうかね。日本人好みのオルタナサウンドを感じるんですがね。
33位: wowaka『アンハッピーリフレイン』(2011)
このランキングの信用できるところって、こういうボーカロイドシーンまでしっかりと評価対象に含めているところですよね。現代の邦楽史観的に考えると、このアルバムをランクインさせることは、非常に理にかなっていると思います。
34位: Fishmans『空中キャンプ』(1996)

35位: Jim O’Rourke『Eureka』(1999)
36位: 青葉市子『qp』(2018)
37位: DJ Sprinkles『Midtown 120 Blues』(2008)
38位: 高木正勝『かがやき』(2014)
39位: 高中正義『The Rainbow Goblins』(1981)
40位: Yellow Magic Orchestra『SOLID STATE SURVIVOR』(1979)

2022年版のリストでは、ファーストアルバムの『Yellow Magic Orchestra』のほうが高くランクインしていましたが、近年ではやはり『SOLID STATE SURVIVOR』のほうが評価高いんですね(納得)。コンセプトに堅実なのは前者だとは思いますが、影響力や大衆性を考えるとこのアルバムがあまりにも強すぎる。
41位: 高中正義『BRASILIAN SKIES』(1978)
42位: Boris『Heavy Rocks』(2002)
43位: Intestine Baalism『An Anatomy of the Beast』(1997)
44位: 久石譲『A Symphonic Celebration』(2023)

あまりにも偉大すぎるため、日本では邦楽評価の際に見落とされがちなのですが、我々は海外の邦楽オタクたちを見習うべきなのかもしれません。こういう、我々日本人には死角的な部分であるものを評価に含めることのできる客観性が、集合知的な評価を行うRYMの強みでしょうね。
45位: 福居良『Scenery』(1976)
私はジャパニーズジャズはかなりの専門外ですが、こう見るとリストにまあまあ入ってるんですね。日本人の作る邦楽名盤ランキングはジャズがかなり見過ごされてるので、ロックやポップスと並んだ時にどの位置に入るのか不明でしたが、RYMではそれを可視化してくれています。
46位: 菊池ひみこ『Flying Beagle』(1987)

このアルバム凄く不思議なんですよね、ここ最近でかなり目にすることが増えました。J-フュージョンのリバイバルによって評価の上がったアルバムの一つなんでしょうね。
47位: Jim O’Rourke『Bad Timing』(1997)
48位: Boris『Dronevil』(2005)
49位: Lamp『ランプ幻想』(2008)
50位: 凛として時雨『Just a Moment』(2009)
【批評のまとめ】
◎ プラスポイント
・客観性
・広くジャンルを包括的に捉えている点 (ボカロ、ジャズ、クラシックなど)
・J-フュージョンをはじめとしたリバイバルの可視化
・「歴史的意義」<「作品の質」
◎ マイナスポイント
・日本で本当に評価の高い、「フォーク」「歌謡」「演歌」「アイドル」「J-POP」などのシーンがまるで見過ごされている
⇒ 日本文化への共感がない or 歌詞の無理解?
・Borisやフィッシュマンズ、青葉市子など、50位中に被りがかなり多い
⇒ リバイバルのたびに知られはするが、まだまだ多種多様なアーティストが広まっているわけではない?

以上、RYMの邦楽アルバムランキングに対する批評でした。
本日もご愛読ありがとうございました!それではまた(╹◡╹)


コメント