HIROSEのミュージックバーへようこそ。こちらのブログでは、音楽を中心としたさまざまな情報を気まぐれに発信しています。
今回はNewJeans入門!ということで、K-POPアイドルグループであるNewJeansを音楽評論的な視点から論じていく特集を組もうと思います。実は私K-POPが好きで、ベタですがNewJeansはやっぱり死ぬほどハマったアイドルグループでした。ライブも、フェスやワンマンなどで三度ほど参加し、CDやグッズなども色々買い集めております。推しはハニ。
近年のさまざまな騒動により、NewJeansは最近「NJZ」と改名することを発表しました。そこでタイムリー的にちょうど良い機会なのではと思い、K-POPアイドルとはいえ実はさまざまな音楽的影響を感じるこのNewJeansというグループを、今一度記事にして再確認してみようと、そういうコトでございます。それでは本編
【NewJeansのプロフィール】

(左からハニ、ヘイン、ダニエル、ヘリン、ミンジ)
NewJeansは、韓国の大手音楽事務所HYBEの新レーベルADORから、天才プロデューサーであるミン・ヒジンの手により構成された、第4世代韓国アイドルグループです。メンバーは、ミンジ(04)、ハニ(04)、ダニエル(05)、ヘリン(06)、ヘイン(08)の5人で、半多国籍的な人選が特徴となっています。詳しいプロフィールは今回割愛しますが、皆、魅力的で個性あふれるメンバーです。
【NewJeansの登場が世界に与えた影響】

NewJeansの登場は、本国のみならず、世界中に多大な衝撃と影響を与えました。
まずはコンセプトですが、名曲「Ditto」が象徴するように、”ノスタルジー”が大きなテーマになっているように感じます。シティポップのリバイバルなどのシーンを見ると、ある種の懐かしさが昨今の音楽シーンに欠かせないような気はしていましたが、NewJeansの登場はまさにそれを決定づけるものでした。また、「Ditto」は制服姿でノスタルジックな演出を漂わせているため、青春への懐古という点で幅広い世代へ普及していきました(異例のロングヒットも納得できますね)。
次に、音楽性の「シンプルさ」が、実は一周回ってショッキングなものでした。というのも、韓国ではBLACKPINKの登場以降、「ガールズクラッシュ(以下ガルクラ)」がヒットの一つの条件としてありました。要は、「カッコいい女性」を押し出すもので、それまで主流であったカワイイ系のコンセプトとは相反して、女性の女性へ対する「憧れ」を目的としたカリスマ的な売り出し方が、メインストリームとして流布していたんですね。そのため、ヒット曲の多くがHIPHOPやEDMを中心としたイカした音楽で溢れていました。しかし、NewJeansの音楽はそのガルクラ的なものでも、反対にカワイイ系のポップなものでもなく、とてつもなくシンプルなものだったのです。NewJeansの楽曲は、R&Bやシティポップ、ブラックミュージックなどのクロスオーバー的なジャンルにより構成されており、アイドルソングの割に強く「ポップス」としての性格をもっているのが大きな特徴となっています。
近年の忙しない社会において、脳は情報量の多いものを遮断しようとします。皆、とても疲れているのです。そんな時、「日常」に溶け込むような、そして何度聴いても聴き飽きないような、そんなNewJeansの楽曲を、我々は求めたくなるのです。そして、この「あえてのシンプルさ」と、先程の「懐かしさのテイスト」が、近年の音楽シーンにおいて、ポップスのヒット曲を示す上で重要な要素になっていると、私は考えているのです。NewJeansの登場は、そのような点で非常にエポックメイキングなものでした。
【NewJeansの音楽ルーツとは?】

それでは、よく論じられてはいるのですが、NewJeansの楽曲を、音楽史的な視点から紐解いていこうと思います。
◎ ニュージャックスウィング
ニュージャックスウィングは、80年代後半に登場した、名プロデューサーのテディー・ライリーによるR&B系音楽ジャンルです。近年はNewJeansのルーツとしてしばしば話題に上がるワードですね。特徴としては、R&BとHIPHOPの中間のようなイメージで、跳ねるようなリズムにラップ調のボーカルが乗るファンキーなものです。ニュージャックスウィングは私自身大好きな音楽ジャンルで、名盤としてはガイの『Guy』や、キース・スウェットの『Make It Last Forever』があります。NewJeansの楽曲としては、「Supernatural」や「Attention」がこれに当たりますね。
ガイは、テディー・ライリーによる音楽ユニットです。ニュージャックスウィングについて知りたい方は、まずガイのファースト『Guy』から入ることをオススメします。
◎ ボルチモアビート
ボルチモアビートは、ボルチモア・クラブ(80年代後半に誕生したブレイクビーツジャンル)において象徴的なリズムの形態の一つです。「Ditto」や「ETA」などの楽曲において、キックのリズムに「タン・タン・タッタッタ」という特徴があるのはわかりますでしょうか。これがいわゆるボルチモアビートと近年では言われることの多いリズムの形で、昨今のポップスを見ていても、洋楽のみならずJ-POPのヒット曲にもよく見られます。例えば、Creepy Nutsの「Bling-Bang-Bang-Born」や「オトノケー Otonoke」、K-POPでもLE SSERAFIMの「Eve, Psyche & The Bluebeard’s wife」など。クセになるリズムですね。
◎ マイアミベース
前述したボルチモア・クラブとの関連で、マイアミで誕生したベースミュージックでありHIPHOPのサブジャンルとして知られるのがマイアミベース。テンポの速さと重低音が特徴のマイアミベースは、近年さまざまなK-POPにおいて引用されるジャンルです。後にアトランタベースへと派生。NewJeansの楽曲では、「How Sweet」がこれに当たります。マイアミベースに、メロディックな旋律とエレクトロなサウンドを加えることで非常にポップな楽曲に仕上がっています。
マイアミベースの有名曲には、INOJの「Time After Time」(シンディ・ローパーのカバー)や、Ghost Town DJsの「My Boo」などがありますね。
◎ ドラムンベース
ブレイクビーツにおいて、より速いテンポのサブジャンルとして、ドラムンベースというものがあります。レゲエを起源にもつブレイクビーツジャンルの「ジャングル」から派生したもので、HIPHOPやハウスなどの要素を含みます。NewJeansの楽曲では、「Super Shy」や「Zero」、「Right Now」がこれに当たります。
ジャンルの代表曲も紹介したいところですが、あまりこれといった有名曲がないんですね(たぶん)。ですが、個人的に好きな(比較的著名な)ポップソングである、ベッキー・ヒル&チェイス&ステイタスの「Disconnect」がドラムンベースの要素を含むので、紹介しようと思います。
◎ シティポップ
シティポップは、80年代前後に流行した日本の音楽ジャンルで、都会的で洒落たサウンドやメロディーが特徴のニューミュージックです。シティポップの影響を受けているのか、またはシティポップを意識しているのかなどは正直なところわかりませんが、NewJeansの「Bubble Gum」は、シンセ型のシティポップ的な要素を個人的に感じます。
シンセ型のシティポップとして、林哲司が作編曲したものが多く見受けられるように感じます。ここでは、菊池桃子の「Mystical Composer」を挙げたいと思います。菊池桃子の初期の2枚である『OCEAN SIDE』と『Adventure』は、こういった楽曲が集中している名盤です。
◎ その他R&B等のブラックミュージック
これらのように、ブラックミュージックの影響が強く見られるNewJeansの楽曲ですが、上記に挙がらなかった他の曲にも、そういった影響が見られるものがあります。例えば、たった40秒ほどのショートナンバーですが、ヘインの透明感のあるボーカルが際立つ「Get Up」や、初期の名曲「Hurt」は、ジャンルとしてはR&B(系のポップス)として区分されそうです。R&Bのもつメロウな雰囲気がNewJeansのノスタルジックなコンセプトと上手く符合しています。特に「Get Up」は、スロウジャム的な雰囲気も感じる非常にエモーショナルな楽曲ですね。
【ファッションとNewJeans】

少し話は逸れますが、NewJeansはファッション面においても強い影響力を持ちます。NewJeansのファッションは、「Y2K」と呼ばれる2000年代初頭に流行したカルチャーを参照しており、日本や韓国の若者の間で起こった近年のY2Kリバイバルの火付け役となっています。また、NewJeansのみならず、K-POPアイドルのファッションが若者に与える影響は非常に大きいです。中にはロックやパンクの要素を含むファッションも多く、ウォレットチェーンやダメージデニム、ハトメベルトやバンドTシャツなどの浸透を促進させています。
【NewJeansのおすすめナンバー】
最後に、私の特に好きなNewJeansの楽曲を、Tiarリストを使って紹介したいと思います(完全に主観のリストです)。まず前提として、NewJeansに好きでない曲が一つもないので、高い次元での話になりますが、その点ご了承ください。

一応ランクと順番はこんな感じになりました。「Ditto」や「OMG」などの人気ナンバーはもちろん高い位置にありますが、「Attention」や「Hype Boy」などの初期の人気曲は正直なところあんまりハマった時期はなかったですね。全体的に、後期の楽曲が好きな傾向にあるとわかりました。

以上、NewJeans入門と、それにより得られる近年(今後)の音楽シーンのヒントについてでした。非常に濃い内容になりましたね。本日もご愛読ありがとうございました。それではまた(╹◡╹)
コメント