HIROSEのミュージックバーへようこそ。こちらのブログでは、音楽を中心としたさまざまな情報を気まぐれに発信しています。
タイトルにある通り、期待の藤井風の新譜をレビュー&解説していきます。簡単に。
とはいえ、リリースから2ヶ月経った今これを書いているのは絶対に遅すぎる。でも、この2ヶ月聴き続けて心の奥から好きになれたので、ぜひこのタイミングで書かせてください。それでは本編へどうぞ。
【アルバム『Prema』について】
そもそも”Prema”とはどういう意味なのか?
調べたところ、サンスクリット語で「愛」(無条件の愛・至高の愛)を意味する単語だそうです。
要は、このアルバムにおける一貫したコンセプトは、「愛」ということですね。
彼の、過去のカタログと比較して、本作の重要な変化をポイントとして押さえておきたいと思います。変化は主に2つ。
①歌詞の言語 : 日本語 → 英語
②メインプロデューサー : Yaffle → 250
本作は、ご存知の通り全編英語詞となっています。日本語は、「Hachikō」などに見られるような、語呂のための利用に登場したくらいです。
そして、同時に大きな変化として特筆すべきな点は、プロデューサーの変更です。
NewJeansなどのアレンジャーとして知られる250が、本作のメインプロデュースを全面的に務めています。当初作曲クレジットを覗いた時は結構驚きました。
これらの点から、まさに、洋楽アルバムとして評価すべき藤井風の最新作。次に、アルバムを聴いた率直な感想を述べたいと思います。
【率直レビュー】

藤井風レベルになると、日本語であろうと英語であろうと最高の新譜になることは確信していたので、心配はありませんでした。
今回のアルバムは、非常に彼のルーツミュージックに対する回帰的な作品になったと思います。過去のディスコグラフィーを振り返っても、ここまで、7~80年代のブラックミュージックを引用し再構築したものはありませんでした。
間違いなく邦楽史に残る、最高のアルバムになったと思います。少なくとも、星野源の『Gen』と並び2025年邦楽ベストに挙がる筆頭の一枚になりました。
しかしながら、個人的にはもう少し楽器の良さを活かした編曲が聴きたかったなというのが、唯一絞り出したマイナスの感想でした。
ピアノとリズム隊に非常にフォーカスされた作品になっているのは、一聴すればわかります。でも、ギターやオルガン、エレピアノやパーカッションなどを聴かせるアレンジを思い浮かべた時、若干に感じる物足りなさの理由が理解できた気がしました(そもそも藤井風に求めることじゃないかもしれない)。
それでは、全曲とはいきませんが、お気に入りの数曲をピックアップし、音楽的な解説を簡単にやっていきましょう。低クオリティですが、軽くさらっていくのにちょうどいいスケール感になったと思います。
【「I Need U Back」】
まずは、2曲目の「I Need U Back」から。冒頭からギターが鳴り響くイントロで、彼にとっては珍しいロック的な導入が印象的です。
編曲は、250の得意技、「ニュー・ジャック・スウィング」と呼ばれるジャンルからの引用です。ニュージャックスウィングとは、80年代後半から90年代前半にかけて流行した、跳ねるようなリズムを特徴とするブラックミュージックです。当時の凄腕プロデューサー、テディー・ライリーの手により広まりました。
例えば、
◎ ガイ『Guy』

◎ キース・スウェット『Make It Last Forever』

◎ マイケル・ジャクソン『Dangerous』

などが著名なところですね。ちなみに、ガイはテディーライリー自身が所属していたグループです。
なぜニュージャックスウィング(NJS)のアレンジが250の十八番かというと、NewJeansでそのアレンジが見られ、一部界隈の間でリバイバル的にNJSの名が広まったからです。
◎ 「Supernatural」 / NewJeans
とはいえ、藤井風のこの楽曲は、NewJeansの中では「Attention」に近い編曲だと感じました。リズムよりも、装飾音にNJSらしさが見られますね。ポップで軽快なアップナンバーです。
【「Hachikō」】
藤井風いわく、初めて4コードから成り立つ循環進行を使用し、ビートから作り始めた楽曲だそうです。K-POPや洋楽に見られる、完成したトラックにメロディーを乗せていく作編曲方法を、唯一行った楽曲ということです。洋楽志向のR&Bやダンスミュージックをやるなら、割とメジャーな選択ではあります。
歌詞では、「ドコニイコウハチコウ」と、本アルバムで唯一日本語を使った部分が存在します。ハチ公とはご存知の通り日本一有名な忠犬のこと。
ベースとビートがあまりにも気持ち良いです。シンセも装飾音も全て効果的で、飽きないナンバー。
【「Love Like This」】
個人的に、本作の中で最も好きな楽曲です。アレンジ含め非常にシンプルな構成ですが、メロディーと歌詞が素晴らしいです。
トラック的な楽曲にもかかわらず、大胆にサビで歪んだコードギターを鳴らしてくれるのが気持ちいい。装飾的なシンセやアナログ的な音色に、250の確固たる実力を感じますね。
音色やコードに、彼が敬愛する80年代のR&Bからの影響を強く感じますね。今回のアルバムはそういったアプローチが多いようです。
【「Prema」】
至高の愛をこの上なく歌い上げたアルバムの表題曲。リズム部分に見られるブラックミュージックのサンプリングが、EIGHT JAMでも触れられていましたね。
歌詞の哲学性が物凄く、ポップシーンのど真ん中にいるトップアーティストとは思えない表現が衝撃的でした。ぜひ、和訳とともにお聴きいただきたいです。
作曲の部分でも、「もうええわ」などに見られるような、Bメロだけ-3転調する藤井風らしい楽曲構成でした。曲の間で雰囲気が変わり続ける構成は、まさに現代的とも言えます。
Mステでのパフォーマンスも完璧でした。
◎ 転調について
[もうええわ]
Aメロ : Em (≒G)
Bメロ : E
サビ : Em (≒G)
→ Gの-3がE
※同時にEmとEのマイナー↔メジャー (同主調転調)
[Prema]
Aメロ : F
Bメロ : D
サビ : F
→ Fの-3がD
【「It Ain’t Over」】
この楽曲も非常に心地良いですね。一番の見どころは、藤井風自身が吹くサックスが初収録されている点だと思います。
とはいえ、私が着目しているのは今回「リズム」。タメの効いたドラムが特徴的な三連符のリズムで構成されており、聴き心地の良いグルーヴを引き起こしています。
有名曲には、ディアンジェロの「Send It On」などがありますね。
ディアンジェロはこのリズムの象徴的なアーティストだと思います。他にも、邦楽では山下達郎の「FUTARI」など。
【「You」】
本作において、80年代R&Bの影響を最も強く感じる楽曲が「You」です。
マービン・ゲイの「Sexual Healing」に見られるような、80’sサウンドの象徴的なアレンジを、あえて現代で再構築している点が興味深いです。アナログで暖かい音色が心地良く、メロディーもキャッチーで何回も聴いてしまう魅力があります。

以上、藤井風『Prema』のレビュー&解説でした。もう何回聴いたかわかんないです。そんくらいの名作であり、人生の愛聴盤の一つになりました。
本日もご愛読ありがとうございました!それではまた(╹◡╹)

  
  
  
  
コメント